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ver.Shanghai な日々


by MiHO-panda

タクラマカン砂漠の夜 ②

タクラマカン砂漠の夜 ②_a0101253_02114.jpgだいたいアウトドアとはほど遠い生活を送ってきた私である。生まれてこの方、自分でテントを張ったこともなければ寝袋で寝たこともない。
他のメンバーも皆例外ではなかったらしく、女5人の人生初めてのテント設営が砂漠のど真ん中で、という若干意味不明な状況。ただ一人だけ手馴れている馬媛さんが先頭切ってあれこれリードしてくれながら、汗まみれ砂まみれで全員分のテントを張っていった。

だけど砂嵐はまだ完全に収まっていない。たまに吹き付ける砂混じりの強風で、せっかく苦労して杭を打った部分があっけなく吹き飛ばされてしまったりする。だんだんと皆の顔に疲労の色が滲み始めた。会話もほとんどなくただ黙々と作業をするだけ。
そんな中、一人がぼそっと呟いた言葉が今でも忘れらない。「私達こんな思いまでして砂漠に泊まろうとしてるんだね・・・。」後になってそれが最高の笑い話になるのだけど。

日没がやってきた。全てがその闇と砂にゆっくりと呑み込まれてしまいそうな砂漠の夜。日中あれほど吹き荒れていた砂嵐はいつしかぴたりと止んでいた。だけど見上げた空にまだ星は見えない。

そしてテントの横で皆で輪になって座った。紙コップのシャンパンで乾杯しながら、誰かが気を利かせて持ってきてくれた小さなキャンドルに火を灯す。ここでの唯一の光。遥か太古の旅人たちもまた同じようにこうして星を待っていたんだろうか。

馬媛さんが南新疆に伝わる民謡を静かに歌い始めた。それはタクラマカンの風にさらさらと溶けゆくように心地よい。
by miho-panda | 2009-02-12 00:03 | 新彊ウイグルの旅